からほりへ越してきたのは2013年3月のことだった。
それまでの7年間、仕事で大分県別府市に住んでいた。関西に久しぶりに戻ったことになる。私は大阪市で生まれてはいるが、三歳の時に両親が奈良市の近鉄系住宅地に引っ越したために奈良で育った。高校までは奈良、大学は神戸、大学院は京都だったので大阪が実はいま一つ分かっていなかった。亡くなった祖母が住んでいたマンションの部屋で引っ越しの片づけをしながら「さて、一から再スタートだな」と思った。
そういえば子供のころ、大好きなNHKの教育番組があった。 「たんけんぼくのまち」である。「チョーさん」というお兄さんがまちを直に見て回って、手に入れた情報を基に「たんけん地図」を完成させる。ぼんやりとした「まち」が具体性を帯びて、その輪郭が浮かび上がり、日常をわくわくさせる対象になっていく。確か絵に描くところが早送りであっという間に地図が完成するのも面白く、夢中でみていた記憶がある。「チョーさんみたいにあたらしい土地に来たらまずは探検だ、別府でもそうしたように実際にめぐっておもしろい情報を探しに行こう」、そう決めた。
そうしてからほりを注意しながら歩き始めると、ところどころのお店に面白そうなイベント告知ポスターが貼ってあることに気が付いた。「ぶら空堀まつり」というもので、商店街を中心に私が住んでいるあたりのエリア、つまりからほりらへんを挙げてのイベントだとわかった。
まつり当日、ひどい雨だったがよく分かっていないままにはいからほり商店街のほうへ入った。するといつもの商店街とは違い、いろいろなブースができ、まつり限定の商品も並んでいた。イベントスペースで学生のブラバン演奏、店舗の中で寄席などもあり、そのハレの雰囲気にわくわくしたのを覚えている。惣菜屋とたこ焼屋がコラボして作った「たこ焼グラタン」を食べ、そぞろ歩いた。
まつりでは限定の空堀商店街のオリジナルエコバッグを販売していた。からほりエリアの筋・通りと有名スポットがざっくりとデザインされており、空堀商店街のところに商店街のひょうたんのシンボルマークが入っていた。地域の住人の私がそれをもって買い物にいくという、そういう地元への愛着というか力の添えかたというか、かかわり方ってすてきだなと感じて迷わず購入した。
そして、あるブースで何かものづくりのワークショップをしていることに気がついた。それが「エ.ビシ」さんの出張ブースで革のキーホルダー作りをワンコインでやっていたように思う。ものづくりのワークショップが好きな私は全く初めてのレザークラフトに挑戦した。柄を選んで刻印し、金銀のアクリル絵の具を塗り、ボールチェーンをつけて完成。
もちろん出来上がったキーホルダー自体も気に入ったのだが、私はそのブースを取り巻くわちゃわちゃ感がなんとも心地よかった。レザーの先生、お手伝い(?)の人、となりで作っている小学生、そのブースを出すために場所を貸している店舗の人。
いろんな人が入り乱れていて、何かのきっかけでおしゃべりが始まると止まらない。とくに制限時間もきまりもなく、自由にそこにいることができた。「よそ」のひとに対するバリアの薄さ。いや、「よそ」とか「うち」とかあまり意識していない空気感。別府ではこのバリアは少々手ごわかったように思うので、余計にそのことを覚えている。その日はそのあたたかさを感じつつエコバッグとキーホルダーを持ち帰った。
しばらくして私はレザークラフト教室「エ.ビシ」に通うようになり、そしてマップからほりらへんを知り、それを片手にまちをてくてくと歩くようになるのだが、その先で、なんとマップからほりらへんの作成を手伝うサポートメンバーになるのだから面白い。私の「たんけんぼくのまち」は7年間かけて形となり完結したことになる。
いまは「自分のまちを楽しみつくす」、その心意気で伊勢に住んでいる。自分の居場所をまずよく知る、そして愛着を待ちたくさん散策すること、それはかなりおすすめのすごし方だ。
☆次回から、おすすめのてくてく情報を発信していきます!お楽しみに~
記者(ライター)紹介
まどか(アトリエ茶の実/イラストレーター)
大阪生まれ奈良育ち、祖母が住んでいた縁でからほりらへんの住人に。すぐにうろうろ町を探検し始め、からほりを支える多くの人と出会う。いつしかマップ「からほりらへん」のサポートメンバー&フェイスブック「からほりらへん」の中の人に。2016年、日本語教員の仕事の傍ら「絵を描くことをライフワークにして楽しみつくそう!」と「アトリエ茶の実」を友人と始め今に至る。2020年3月、結婚と同時に伊勢市在住に。
▶からほりらへんオンラインショップにて作品を販売中!